不動産をめぐる家族信託のモデルケース(活用事例)(収益不動産の平等分与、死後の売却分与、共有不動産のトラブル防止策、自宅不動産空き家対策、安定収入確保など)について具体的に解説します。
子3人の子と離れて生活しています。自宅を継ぐ子供がいないため、自分が死んだ後は自宅を売却換価して、3人の子で平等に分けてもらいたいです。
子や信頼できる親族に自宅を信託し、処分権限を与えます。亡くなった際には信託を受けた人(受託者)が自宅を売却し、換価代金を子3人に分け与える事ができますし、万一、認知症等で介護施設等に入所する事になった際に自宅を受託者で処分してもらい、入所費用等に充てる等柔軟な対応を行ってもらう事が可能です。
なお、遺言を作成して亡くなった際に上記の相続発生時の換価処分を実行する事も可能ですが、自宅の名義を一旦相続人に変更する必要があり、手続きが煩雑になりますし、また、認知症等で判断能力が低下した際には成年後見人を利用しないと処分ができない事になります。
兄弟3人でアパートを相続しました。将来的に兄弟のうち1人に相続が発生したり、兄弟の仲が不仲になってしまった時の事を考えると心配です。
アパートを兄弟の1人、または兄弟のの相続人の1人に信託し、管理や処分の権限を与えます。信託する事によって信託した人(委託者兼受益者)は家賃収入を受け取ったり、処分した際の代金を受け取る事にとどまり、賃貸借契約や売買契約を1人の判断に委ねる事が可能です。
仮に兄弟1人に相続が発生し、その子達が相続する事になっても経済的利益のみを相続する事になり、不動産の共有者になる事はありません。
また、兄弟の1人を管理処分の権限を与えて(受託者)おき、もし受託者である兄弟の1人に相続が発生した場合には二次的に別の兄弟を受託者にするという内容で信託する事も可能です。
高齢の父が息子の私と離れて住んでいます。今すぐではないですが、いずれホームに入所し、父が住んでいる家が空き家になってしまいます。防犯や災害を考えると心配です。
認知症等により判断能力が低下してしまうと、成年後見人を選任しないと財産を処分する事ができなくなってしまいます。成年後見人を選任したとしても、自宅を売却する場合、裁判所に申立をし、居住用財産の処分の許可を得なくてはならず、手続きが煩雑になり、時間もかかってしまいます。
自宅を父から子に信託する事で、信託した時点から名義が子に移るため、お父様に何かあった時に息子さんを当事者としてスムーズに売却換価する事が可能になります。また、このケースにおいて司法書士等の第三者を信託監督人に設定する事で、売却には監督人の同意が必要となり、価格、時期等について適正なタイミングで売却する事が可能になります。
アパートを保有していて妻はいますが子はいません。アパートが建っている土地は先祖代々から譲り受けてきた土地で、懇意にしている甥っ子に引き継いでもらいたいのですが、自分が妻より先に亡くなった時にアパートの収入は妻の生活に充ててあげたいです。
遺言で甥っ子へアパートを信託します。ご主人が奥様より先に亡くなった際には、奥様が利益を得る人として(受益者)、奥様の生存中はアパートの収入は奥様へ入るようにし、奥様の死亡で信託を終了させて、甥っ子さんにアパートを帰属させる事が可能です。