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コラム「家族信託における受益権の放棄」についてアップしました。2022.06.03

信託法99条1項により受益者は隠宅行為の当事者である場合を除き、受益権を放棄することができます。

一般に権利の放棄は、第三者を害しない限り、権利者が自由に行うことができますから、権利の総体としての受益権を受益者が放棄することは、規定を設けるまでもなく、当然に放棄できます。

しかし権利放棄には遡及効がなく、将来効しかありませんので、当然に受益権を取得して信託の利益を享受する受益者の場合には、将来発生する信託の利益は放棄することができても、過去に発生した信託の利益は享受してしまうことになります。

そこで受益者に指定されてからその権利を放棄するまでの間の信託の利益の強制的な享受から免れることを可能にするため、受益権の放棄には特別に遡及効が付与されています。

既給付分は受領し、将来分のみを放棄する場合、残存するすべての受益債権の放棄を行うことになります。

受益債権を放棄しますと、受益債権は受益権の必須の部分であり、受益債権のない受益権は存続し得ないから、受益権は消滅しますが、受益権の消滅の効果が遡及効を持つことはありません。

受益権を放棄しますと、初めから受益権を有していないことになり、すでに給付を受けているものがあれば、不当利得として信託財産に返還することになります。

また他に受益者がいない場合、当初から受益者が存在しないこととなって、目的達成不能により終了することになります。